暗譜のあれこれ

暗譜とは

暗譜:楽譜に書いてある「音・強弱記号・楽語など」全て覚えて演奏すること。

先日、同い年のピアニストと

どうやったら暗譜できるのだろう…

という話題になりました。

どうやって暗譜をすればいいのか今まで先生には全く習ってきませんでしたし、具体的にどのような工夫をしているのか、全く考えたことがありませんでした。
幸いなことに私自身は暗譜に苦労したことがなく、暗譜が必要になる頃には既に自然と暗譜が出来ていました。

ピアノは2段の楽譜を覚えなければならないのに対し、ヴァイオリンは1段だけなので、暗譜はヴァイオリンの方が容易かと思います。
しかし、どんなに練習をしても覚えられないことは誰にでもあります。
私も暗譜が得意とはいえ、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第1楽章の後半が記憶から吹っ飛んだことがあります。
先ほどのピアニストも1日6〜7時間練習に費やしていましたが、暗譜に非常に苦労していました。
では、どうやったら暗譜が出来るようになるのでしょうか?

今回は、「悩める暗譜のあれこれ」をご紹介します♪

目次

そもそもなぜ発表会では暗譜で弾かなければならないの?

基本的にソロで弾く発表会は楽譜を見ずに暗譜で演奏します。
苦労された方も多いのではないでしょうか。

私もできる限り暗譜で演奏することを推奨しています。
なぜなら暗譜で演奏する必要性を感じることで、より真剣に曲に向き合うきっかけになるからです。
視覚的に音を見るのではなく体で覚えることで、音を追うだけになりません。

習い事や実技試験で必ず暗譜をしなければならないのは、

  • その曲をよく理解してほしい
  • 音楽を自分なりに表現してほしい
  • 本番までにしっかり練習を重ねてきてほしい

などといった指導する人の思いがあるのです。

暗譜のメリット

では、暗譜は具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

  1. 楽譜を見ないので視野が開放的になり表現豊かにのびのびと演奏ができます。
  2. 目で楽譜を追っていた作業がなくなった分、よく音を聞き、弓のバランス・左手の動きに集中することができます。
  3. 暗譜で弾けるということは、その曲をよく理解しているということです。ただ音を追うだけの音楽になりません。

有名マエストロの暗譜

以前日本人の大物指揮者と共演した際、その方はR.シュトラウス作曲「英雄の生涯」を暗譜で指揮をされていました。
「英雄の生涯」は約50分もあり、しかも第1楽章や第2楽章と分かれてなく、約50分間一息もつかず一気に演奏するとんでもなく労力と集中力が必要な曲。
楽器のパート数は合計47。全て暗譜で指揮されていました。
どうしてそのような曲を暗譜で指揮されたのかお伺いしたところ、このようなご回答を頂きました。

楽譜があると、どうしても楽譜を見てしまうから気が散ってしまうのです。
この曲は編成も大きく、曲自体が非常に展開が激しいですし、正直楽譜を見ている場合ではありません。
暗譜をした方が楽に指揮できるのです。

暗譜のコツ

暗譜得意ヴァイオリン講師による暗譜のコツをご紹介します!

  • とにかく練習の数を重ねる!
  • その音が何の音に向かうのか、常に考えながら弾く。音楽に推進力をつける要素になります。
  • 音だけを覚えるのではなく、音と一緒に強弱記号もまとめて覚えるように心がける。そのように練習すると、次にどこの音へ向かうのか目印になります。
  • 一気に暗譜をしようとせず、まずは4小節ごとに楽譜から目を逸らして弾いてみる。慣れてきたら8小節ごと、16小節の少し大きなフレーズごと、と楽譜から目を逸す時間を増やしていく。
  • 暗譜が少しできてきたら、(楽譜から目を逸らすのではなく)譜面台から全く楽譜を乗せないで弾いてみる。
    つまづいたら必ずその箇所を楽譜にチェックする
  • 次に楽譜を見て練習するときは、楽譜に記した箇所を重点的に練習する
    記した箇所は、暗譜だけではなく技術的にもまだ苦手な箇所でもありますし、表現もうまく出来ていない箇所です。
    暗譜の段階となり焦るかもしれませんが、1つ1つの音の動作(左右の手の動き、次の音の方向性)をよく確認しながら頭でよく理解しながら、ものすご〜〜くゆっくり練習しましょう。
  • 練習以外でも頭の中で曲を流してみる。その後の音がわからなくなったら、その箇所が覚えていないということです。

楽譜は譜面台に置いておいて「目を逸らす」というのが自分流暗譜方法です。
意識的に目を逸らすのも良いのですが、左右の手や腕や指の位置を見ながら練習して、必然的に視線が楽譜から離れている状態になるのが理想です。

暗譜で演奏しない場合の注意点

暗譜で演奏しない場合は、例えば

  • オーケストラ
  • 室内楽
  • 二重奏ソナタ

ピアノとヴァイオリンの二重奏ソナタは、アンサンブルなので楽譜を見る場合が多いのですが、あまり見過ぎないように譜面台の位置を下の方にしたり角度を斜めにしたりします。私もお守り程度で置いておいて、ほぼ暗譜で演奏しています。

オーケストラや室内楽で楽譜を置いて演奏する際の注意点として

  • 視野を広く。視線を楽譜に齧り付き過ぎない。
  • 周りの音をよく聞く。
  • 楽譜に頼り過ぎず、よく頭で理解した上で演奏する。特に音の方向性を見失わないようにする。

当たり前のことを言っていますが、やはり楽譜を見る作業があるので「耳で聞く」ということが疎かになりがちになります。
また、楽譜があるからといって、行き当たりばったりで演奏は出来ません。
しっかり譜読みをしてどのような音楽を作るか計画を立てた上で演奏しましょう!

暗譜にお困りの方へ!おすすめ動画をご紹介♪

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